小さな冒険者と過ごした3日間

2023年、7月25~27日、神奈川県箱根町芦ノ湖キャンプ村にて、今年も「箱根町×ゴールドウイン キッズサマーキャンプ2023」が開催された。冒険家の三浦豪太さんをリーダーに迎えたキャンプに集まってくれたのは、箱根町内と町外の子どもたち。連日の真夏日のなか、15人が繰り広げる冒険とは……。

五感をフルに活かしてみよう

「五感ってわかるかな?」
 期待と不安が入り交じる子どもたちを前にした冒険家はにかっと笑い、やわらかく話しはじめる。すると、恥ずかしそうな声、元気な声、誇らしそうな声がこぼれだした。
 視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚。
「そうだね。このキャンプでは、その五感をフルに活かしてみよう。見るだけ、聞くだけじゃなくて、触ってみたり匂いを嗅いでみたり。そうすることで五感は研ぎ澄まされ、それまで聞こえなかった鳥の声をキャッチできたり、風の変化に気づいてゆく――そうした世界が広がるような新しい感覚を、冒険感と呼んでいます。これは、公園で一日遊んだだけではなかなか身につきません。自然に身を浸し、体に潜むこの感覚を、このキャンプを楽しく過ごしましょう」

 キャンプのリーダーを務めるのは、スキーヤーとしてオリンピックに出場し、父・雄一郎さんとともに三度、エベレストに登っている三浦豪太さん。そんな冒険家のかけ声とともに「エイエイオー!」。
 その後は子どもたちを和ませるようなゲームが続いた。声を出し、体を動かすことで緊張はほぐれ、笑顔があふれはじめる。3日間のキャンプはこうして幕を開けた。

箱根の3つの小学校から集まった8人と、町外から参加した7人がひとつになって、サマーキャンプがはじまる。まずは緊張をほぐすよう、お互いを知ることができるゲームからスタート

 7月25~27日、神奈川県箱根町芦ノ湖キャンプ村にて「箱根町×ゴールドウイン キッズサマーキャンプ2023」が開催された。箱根町とザ・ノース・フェイスなどアウトドアブランドを擁するゴールドウインの共同開催によるキャンプは、昨年に続いて2回目。今年のキャンプには、箱根町内と町外在住の小学3~6年生、15人が参加してくれた。

打ち解けてゆく子どもたち

「まずは、みんなが眠るテントを張りましょう」
 子どもたちを3人ほどのグループに分けひとつのテントを配ったら、スタッフは説明のために一度テントを設営し、あとは注意深く見守っている。すると「テントを張る」という課題を前に、30分前に出会ったばかりとは思えないほど子どもたちは親密になり、相談したり笑ったりしながらテントを張ってゆく。

3〜4人でグループとなり、協力してテントを設営し、マットを敷いてシュラフを広げ、寝床を用意してゆく。そうした作業を通して、こちらが驚くほど打ち解けてゆく子どもたち

森の小道を抜けて箱根ビジターセンターへ

 テントを張り終えると、ネイチャーガイドの築紫宗太さんの案内で、近隣の箱根ビジターセンターへお散歩。日が傾いた午後の森は、ヒグラシの合唱がシャワーのように降り注いでいる。そんななか、築紫さんはある鳥の歌声を聞きつけた。
「これはホオジロ……と図鑑に書かれている鳥です」 
 書かれている?
「彼らは自分のことをホオジロと認識していないでしょう。図鑑に書かれている名前は、人間が分類するために、便宜上、つけたものです」
 ふむふむ、たしかに。
「同じように、図鑑などに書かれている生態なども、“きっとそうだろう”と人間が勝手に想像したものです」
 もちろん名前を知ることも大事だと前置きし、話を続ける。
「本当のことは彼らにしかわからないんです。だからこそ、自分が感じたことを大事にしてください。そして、感じ方は人それぞれです。ですので、みんなが感じたことをそれぞれが発表して、わけあいましょう」
 思わぬ言葉に目の前が開けるような思いに。そうしてビジターセンターへの道のりで、子どもたちはキジの家族やたくさんのセミ、シカの足跡などを見つけていた。

ニコンビジョンの協賛により、顕微鏡と双眼鏡が用意されている。

双眼鏡を片手に、あちらの鳥を眺めたり、こちらの雲を眺めたり、

台座が外れる顕微鏡で樹皮を観察し、また、セミの羽根の美しさにため息をつく。

アウトドアや旅することの魅力は、海の向こうの世界を想像することであり、また、足もとの自然の深さに気づくことなのかもしれない

箱根ビジターセンターでは、箱根の特殊な地形の成り立ちと、そこに暮らす不思議な生き物について学ぶ

三浦豪太さんによる冒険講座

 ビジターセンターから戻ると、三浦豪太さんによる冒険講座がはじまった。父・雄一郎さんとのエベレスト登山をスライドショーで見せながら、世界最高峰に挑む冒険の知られざる姿を伝えてくれる。
「ここはエベレスト(8848m)とローツェ(8516m)、ヌプツェ(7861m)に三方を囲まれた谷・ウエスタンクームです。夜には-30℃を下まわるような場所ですが、昼間の日なたの気温は何度でしょうか?」
 子どもたちからさまざまな声があがる。-15℃、-10℃、0℃、5℃……。
 しかし、答えは50℃!
「まわりを高い山に囲まれたこの谷は、地形的に熱が反射しやすいうえに、標高6000mを越えるために空気がとても薄く、熱が空気に吸収されず、反射した熱が逃げない。だから、日なたは+50℃もある氷の砂漠なのに、日陰は-20℃という、恐ろしい世界です」
 そんな環境で暮らしながら山頂を目指すのが、冒険でありアウトドア。そして、アウトドアとスポーツのいちばんの違いは、生きていることそのものがひとつの大きな活動である、ということ。

「これからみんなはハヤシライスを作るよね。それもフィールドにおいて命をつなぐという点で立派な冒険です。もちろん、出すこともだって!」
 出すこと?
 子どもたちの疑問ににっこりうなずき、お話はエベレストでのトイレ事情へ。
「あるとき、猛吹雪に襲われた標高7500mのテント内で、父がため息を漏らしていたんです」
 酸素や燃料が少なくなり、歴戦の冒険家である父もさすがに追いこまれたのか。思わず声をかけると、「ワシはいま、キジ撃ちにいこうかいくまいかで悩んでいる」とこたえた。
「キジ撃ちとはうんこをすることですが、空気が地上の1/3しかない高所で踏ん張ると、お腹がぐっとへこんで呼吸ができなくなる。ロープで安全を確保しながらうんこをするのも冒険だけど、父さんのすぐ後ろでお尻を見あげながら山を登るのはぼくだから、行ったほうがいいとすすめたんです」
 そうして雄一郎さんは吹雪のただなかへ。5分ほどしてテントへ戻ると、こう言った。
「お、お、お尻が凍って死ぬかと思った……これが本当の冷ケツ動物」
 これが本当の冒険家なんです、と豪太さん。冒険を支えるのは、頑なな生まじめさだけではないという。
「心の余裕というのかな、ある種のユーモアが大切なんです」
 そして、冒険家とはとてもわがまま――好きなことをひたすらに追求する生き物であるという。
「それは誠実さともいえます。ですから、自信を持って好きなことを突き詰めてください」
 エベレストの遠征チームは、あらゆるプロの集まりだった。エベレストの頂上に8度登ったガイドであり、山頂まで荷を運び、おいしい食事を作ってくれるシェルパたち、その様子を撮影をする山岳カメラマンなどなど。
「つまり、好きなことを追求したからこそ、それぞれの分野でプロになり、それぞれが得意技を持ち寄り、を助け合うことができたんです」

 ただ気が合うだけでなく、共通の目標に向かって手を取り合えるのが本当の仲間ではないか……そう言って笑う豪太さんは、エベレストに渦巻く大きな雲の写真をスクリーンに映し出した。すると、子どもたちから驚きの声が漏れる。
「そう、ぼくもこの雲が竜に見えたんです。山や地球に意思があるならば、きっとこういう形で現れるんじゃないか。昔の人が山を神さまとして崇めたのも、こうしたことがきっかけだと思っています」
 山に触れるたびに湧きあがる自然への畏敬の念。ヒマラヤにもここ箱根にも、近所の小さな自然にも、神さまはきっと宿っている。そう思って接することを大切にしているという。
「自分の夢ややりたいこと、そして仲間を大切にし、自然を敬うこと。この3つをぼくからのメッセージとして、みんなに贈りたいと思います。今日、明日、明後日のキャンプを大いに楽しみましょう!」

サマーキャンプの最大の特色は、冒険家の三浦豪太さんが3日間、子どもたちに寄りそってくれること。豪太さんはスキーヤーとしてでも、冒険家としてでもなく、「自然が大好きな元子ども」の視点から、冒険やアウトドアの楽しさを伝えてくれる。「自分の好き」を育てること……そんなあたたかい言葉は、きっと子どもたちを支えてくれるはず

夜のメニューは、具だくさんのハヤシライスとフレッシュサラダ。
「同じ量の同じ素材で作るのに、3つの斑でそれぞれのカラーが出るのがおもしろいね!」と、ハヤシライスを3杯食べた豪太さん

夕食後は星空観察

 夕食後は箱根ジオミュージアムの山口珠美さんによる星空観察が開催された。上弦の月が浮かぶ夜空には、都会では見られないほどの星が瞬いている。
「今日はすごくよいコンディションです」
 山口さんは太鼓判を押しながら、夏の星座を探すときの起点となる、北極星の見つけ方を教えてくれた。北斗七星の柄杓の先を延ばしていくと、貴色っぽい星が……。
「では、あの黄色っぽい星が北極星であることを確認しましょう」
 そう言って、柄を握り、伸ばした右腕を目の高さまで上げる。そうして同じように伸ばした左手で拳をつくり、右拳に乗せる。そしてまた右拳を左拳の上に。
「拳ひとつが10°分になるので、3つで30度。そこに光っているのが北極星。だからあの星は北極星だとわかります」

 そして、会場には大きな天体望遠鏡であるeVscope2が据えられ、そこでとらえた画像を鮮明にスクリーンに写し出していた。
「ドーナツのように2重になっているのは、外側の赤い星と内側の青い星、ふたつの星がひとつに見えているから。この星は約2600光年離れた環状星雲・M57で、Ring Neburaと呼ばれています」
 見えている星も曇った日などは見ることはできない。そして、一見、真っ黒な空の向こうには、望遠鏡でようやく見ることのできる星もある。いま、私たちに見えているものが世界のすべてではないという事実は、心の地平線をぐっと広げてくれる。

夕食後に開かれた星空観察教室では、夜空の向こうの広大な世界へと誘われる。北極星を見あげて北を知る……大航海時代の冒険者のようで、わくわく!

宝の地図を手に山登りへ

 翌日は朝からお楽しみの山登り。なかには出発を待ちきれず、4時から起きだした子も……! 
 朝食後、豪太さんはさっそく子どもたちの前で地図を広げる。そして、等高線が描く尾根や谷、ピーク、等高線が密なところとそうでないところの違いなどなど。
「あとは想像してごらん。見方によっては宝の地図になるよ」

朝ごはんをお腹いっぱい食べたら、豪太さんから地図の見方を教わって、山登りへと出発! 

 そうしてさんさんと降り注ぐ太陽の下、芦ノ湖畔を元気よく歩きはじめる。先頭に立つガイドの築紫さんは、芦ノ湖の水が秘める不思議を解説してくれた。
「海からの暖かく、湿気を含んだ風が箱根の山にぶつかることで雨雲になり、箱根にはたくさんの雨が降ります。すると芦ノ湖のまわりの森が雨水を涵養し、浄化するように濾過し、湧水が芦ノ湖を潤すんです」
 湖畔の道を離れて湖尻峠を目指す登り道に差しかかる。標高差は120mほど、はじめの70mはゆるやかだが、続く40mは険しい登り道……。そんな状況を励ますかのように、豪太さんは次々と出会う植物を解説してくれる。 ヤマイモの名で知られる自然薯がやがてムカゴの実をつけること。アオキには抗菌作用が、ミズヒキには止血作用が、ヘビイチゴには抗炎症作用があること。
「これは毒性の強いトリカブト。食べられる植物と薬用植物、そして毒草が混在する自然っていいよね。大地のパワーというか豊かさを感じるなぁ」
 毒草をも愛でる冒険家の言葉に足を止めると、湖からの風がふわりとすり抜けた。

まずは芦ノ湖の湖岸歩きからスタート。

ハコネザサの新芽を吸うとほんのり甘いことを教えてくれる、ガイドの築紫さん。

豪太さんは食べられる植物や薬草、危険な植物などを教えてくれる

森の登り道を抜けて稜線へ。

その先には思わぬごほうびが!

キャンプ場へと戻る下り道では、築紫さんに倣い、出会う植物たちに子どもたちが次々と素敵な名前をつけてゆく。くまのみ、ひげおじさん、こけたろう、もふもふ…

キャンプ場に戻り、お昼を食べたら、冷えた体を冷ましに湖へ。虫博士の4年生が珍しい戦地小金を発見し、豪太さんは大興奮!

大いなるなにかの気配

 ロープウェイが大涌谷の駅に近づくと、地球が生まれた頃のような景色が迫り、生物感のない山肌からは煙がもくもくと湧きだしている。前夜、星の世界を案内してくれた山口さんが、この日は箱根の特殊な地形、独自の風土を生み出した火山の働きを、わかりやすく説明してくれる。全日、豪太さんが話してくれた大いなるなにかの気配が、ここには濃密に漂っている。

午後はロープウェイに乗って、大涌谷のジオミュージアムへ。

昨晩もお世話になった山口さんから、火山と箱根の地形の成り立ちについて学ぶ

ごはん前のわずかな時間も虫捕りと顕微鏡を使った観察にいそしむ…

夕食はスパゲッティミートソース

たっぷりごはん食べた後のお楽しみは、キャンプファイヤー!

夜空を照らす炎は、みんなの心に残るかな

最終日

 この日も子どもたちは早くから目を覚ましていた。彼らに流れる空気は目に見えるように親密さを増している。

朝、残り時間を惜しむように早起きする子どもたち。体力的にはきついはずなのに……。

スタッフの片付けを手伝い

朝ごはん作りに精を出す

 この日の午前中は、芦ノ湖の魚を守り、育てる漁協のの養魚場を見学。芦之湖漁業協同組合は全国でも例の少ないヒメマスの養殖に成功している。養魚のうちに湖に放されたヒメマスは、芦ノ湖の環境になじみ、より健やかな状態で産卵期を迎える。そうして川へと遡上したヒメマスを、芦之湖漁業協同組合では手作業で採卵し、受精させている。
「今日は、みなさんで、そんなヒメマスたちに餌をあげてください」
 漁協の結城陽介さんが子どもたちに声をかける。おもしろいのは、魚種によって性格が異なること。子どもたちが近寄ると逃げてしまうサクラマス(ヤマメ)は、いつも餌をあげている結城さんの姿を追うように移動する。
「彼らは水の中から人を見分けているのでしょうね」
 結城さんはそう言って笑うと、我が子を見るような視線を魚たちに送った。

芦之湖漁業協同組合のよう漁場では、ヒメマスなどの餌やりを体験。

繊細な魚たちの生態と、それを育む芦ノ湖の豊かさを学ぶ

 午後は、キャンプ最後のプログラムである箱根寄木細工の体験教室が行なわれた。金指ウッドクラフトでは、毎年、箱根駅伝のトロフィーを手がけており、金指さんはその実物を持参し、そこにこめる思いや受け継がれた技術について説明してくれた。

指導をしてくださるのは、金指ウッドクラフトの金指ナナさん。

子どもたちは残された時間を惜しむように素材を組み合わせていった。

最後のプログラムである、箱根伝統の寄木細工教室。色とりどりの素材を合わせて試行錯誤。家族のお土産をつくる子も

小さな背中には意思と勇気があふれている

 昨年、行なわれた第一回の同キャンプでは連日の風雨に見舞われた。非常事態が生み出す高揚と一体感により特別な時間を過ごすことができたが、スタッフには箱根の自然に触れさせてあげられなかったという思いが残っていた。だからだろうか、スタッフの今年にかける思いは強く、それでいて、連日30℃を越える環境のなかで、非日常のひとときを過ごす子どもたちは、余力を残すことなくパワフルに動き回る。スタッフはその気持ちを最大限に受け止めつつ、さまざまな状況を見極めながら柔軟にプログラムに修正を加えていた。そうして夜遅く、子どもたちが寝静まると、どうすれば来年のキャンプがより充実するかということを自然に話し合っている。そうしてひと息つくと、誰からともなくこうつぶやいた。
「子どもの頃、こんなキャンプがあったらなあ」
 食事やプログラムの進行など、キャンプの実務を引き受け、陰に日向に心を砕いては、絶妙の差配を見せたSOTOLABOの南方慎治さんは、2回目のサマーキャンプを終えてこう振りかえった。
「今年はようやくプログラムをこなすことができたけど、本当のことをいうと、子どもたちが必要なこと、やりたいことが、彼らから自発的に行なえるキャンプが理想なんです」
 そして、南方さんは、この箱根のキャンプはその理想に近づけるのではないかと考えている。そこで、今年のキャンプではやるべきことだけを伝え、時間感覚は子どもたちにあずけた。そうして、いつの間にかキャンプが動いていく、という流れを植え付たという。
「それができたのは、スタッフのチームワークがよいからです。ゴールドウインと箱根町、現場のスタッフの連携が取れているからこそ、子どもたちはどこへ行っても受け入れられているという感覚がある。だからこそ、強い一体感と安定感が生まれるんですね」

 そして、子どもたちの北極星となる三浦豪太さんの存在――この3日間、子どもたちの誰よりも汗をかき、彼らとともにキャンプを楽しんだ豪太さん。そんな豪太さんの心には、ある恩師の姿があるという。
「小学2年生のときに、神奈川県から北海道に引っ越したのですが、同級生はふたりしかおらず、なかなかなじめずにいたんです」
 その一方で生き物が大好きだった豪太さんは、北国の自然に心を開いてゆく。その姿を見ていたのが、学校の皆川國男先生だった。
「先生は子どもたちを連れ、ブルーシートなど簡単な道具だけを持ち、森で5日間暮らす自給自足のキャンプに連れていってくれました。いまでもあのキャンプが最高峰だと思うし、いまのぼくにはとてもできない内容です」
 子どもたちと同じ目線で、心から自然を楽しむことのできる豪太さんの原風景。自然を愛する大人に手を差しのべられ、自身の礎を築き、心の羽根を伸ばすことができた。豪太さんのキャンプや子どもたちに向けた並々ならぬ愛情の源泉は、そんな経験にあるのだろう――。
 その魅力で子どもたちを引っぱる豪太さんはリーダーであり、自身はいつでも背後に控えているベースキャンプのようなもの……南方さんはそんなふうに笑った。
「そして、去年も今年も、6年生の子から、中学生になったら参加できないの? という声があがっているんです。いずれはここで同じ時間を過ごした彼らの手を借りて、子どもたちにとってより魅力的なキャンプにしていけたらと思っています」
 3日間のキャンプで、子どもたちはときに無邪気で、ときにたくましかった。ゴールドウインの藤村充宏さんは、キャンプの前にある保護者からこんな話を聞いていた。
「うちの子は家ではなにもできないので、少し心配なんです……」
 そんな経緯もあり、少し気にかけてその子を見ていたが、キャンプがはじまると初めて出会った子が荷物を運ぶのを手伝い、擦り傷を負った仲間に肩を貸していたという。
 知らない大人と子どもと自然のなかで過ごす、非日常の3日間。そんな世界だからこそできることもあるけれど、そこで得た経験は、日常と非日常をつないでくれるはず。
 親の目で見ると、どうしても頼りなく見える子どもたち。けれどもひとりの大人として彼らに接していると、小さな背中には意思と勇気があふれている――そんなことに気づかされた3日間だった。

お日さまに恵まれたキャンプは、無事に終了。

文=麻生弘毅
写真=久高将也
ディレクション=金子森
取材協力=箱根町、ゴールドウイン、SOTOLABO、ニコンビジョン、箱根DMO